高性能砒素吸着剤(As-Catch2)
薬品を用いた特殊製法で製造した非晶質の粒状水酸化第二鉄で、粒径は0.1~0.5mm程度です。
砒酸を吸着でき、亜砒酸も酸化せず効率よく吸着します。
水道用薬品評価試験結果は鉄、マンガンの値は水道用薬品の基準を超えましたが、他の項目は評価基準に適合しております。
特許:第3961558号 / NETIS登録番号:KT-150112-A
砒素(ヒ素)吸着力
図1に示す吸着等温線からわかりますようにAs-Catch2の砒素(ヒ素)吸着力は極めて強く、図2に示すように砒素(ヒ素)吸着力が高いとされている製品の6倍以上で、0.01ppm以下の極低濃度の亜砒酸、砒酸を多量に吸着します。
図1 As-Catch2の砒素(ヒ素)吸着等温線(原液20mg/L、pH7.0、温度20℃)
砒素(ヒ素)吸着速度
As-Catch2の砒素(ヒ素)吸着速度は図3に示すように極めて速いため、通水速度が速くても砒素(ヒ素)を吸着するので、装置の小型化が可能です。
図3 As-Catch2の砒素(ヒ素)吸着速度(原液濃度20mg/L、As-Catch2 10g/L)
砒素(ヒ素)吸着力のpH依存性
As-Catch2の砒素(ヒ素)吸着力は図4のようにpHにほとんど影響しません。図からAs-Catch2はpHにかかわらず砒素(ヒ素)を吸着することがわかります。
図4 砒素(ヒ素)吸着力のpH依存性(1時間振盪,原液濃度20mg/L、As-Catch2 10g/L)
砒素(ヒ素)吸着力に及ぼす共存イオンの影響
表1に示すように、地下水によく含まれているイオンがかなり多量に存在してもAs-Catch2の砒素(ヒ素)吸着力に及ぼす影響はほとんどありません。
共存陰イオン濃度(mg/L) | ヒ酸除去率 | |
0.0 | 100.0 | |
SO42- | 384.3 | 100.0 |
768.6 | 100.0 | |
Cl- | 70.9 | 100.0 |
141.8 | 100.0 | |
NO3- | 62.0 | 100.0 |
124.0 | 100.0 | |
HCO3- | 183.0 | 100.0 |
366.0 | 100.0 |
共存陰イオン濃度(mg/L) | 亜ヒ酸除去率 | |
0.0 | 100.0 | |
SO42- | 384.3 | 98.2 |
768.6 | 98.2 | |
Cl- | 70.9 | 98.8 |
141.8 | 98.9 | |
NO3- | 62.0 | 99.0 |
124.0 | 99.3 | |
HCO3- | 183.0 | 100.0 |
366.0 | 100.0 |
表1 As-Catch2の砒素(ヒ素)吸着力に及ぼす共存イオンの影響
砒酸イオン濃度20mgAs(Ⅴ)/L, 亜砒酸イオン濃度20mgAs(Ⅲ)/L, As-Catch2 10g/L)
浄化処理水のpH
As-Catch2中を通水しても処理水のpHにほとんど影響を与えません。
図5 As-Catch2処理水pHの経時的変化
砒素(ヒ素)吸着の持続性
As-Catch2の砒素(ヒ素)吸着力は図6のように極めて強く、処理水の砒素濃度0.01mg/L以下を維持する期間は砒酸では原水平均濃度0.40mg/L、通水速度SV6.6で159日間で亜砒酸では原水平均濃度0.68mg/L、通水速度SV7.7で82日間です。その間の砒素(ヒ素)吸着量は砒酸では24mg/gで、亜砒酸では22mg/gです。本材は砒酸・亜砒酸濃度が0.1mg/Lの場合9万倍以上容積の水を浄化できます。
As-Catch2の物性
As-Catch2の主成分は水酸化第二鉄で一部硫酸第二鉄を含んでいます。成分は表2の通りで、人の健康に悪影響を与える元素を含んでいません。
全鉄(T-Fe) (%) | 50.6 | 2価Fe0.58%、3価Fe50.0% |
全硫黄(T-S) (%) | 1.75 | 硫酸根として5.26%、Oは3.51% |
全塩素(T-Cl) (%) | 0.13 | |
OH基(%) | 44 | 元素分析結果から算出 |
重金属元素 | 検出されず | |
pH | 4.5 | |
電気伝導度(mS/m) | <130 | |
容積重(g/cm3) | 0.68 | (タッピング20回) |
湿潤密度(g/cm3) | 1.4 | |
粒径(μm) | 100~500 | |
保存形態 | 水中 |
表2 As-Catch2の物性
As-Catch2は特殊製法で作った、非晶質(図7参照)の水酸化第二鉄で粒径は0.1~0.3mmの顆粒です。
顆粒を構成している微粒子の大きさは図8の電子顕微鏡写真でわかるように約0.7μmと小さく、これら物性が
As-Catch2の砒素(ヒ素)吸着力を強くしている理由です。
As-Catch2を用いる砒素(ヒ素)吸着装置の特長
As-Catch2の特性を活かし次の特長を持つ砒素(ヒ素)吸着装置を製造できます。
①.亜砒酸も事前に酸化処理することなく除去できる。
②.砒素(ヒ素)吸着域がpH3~9と広いので、処理前後のpH調整が要らない。
③.対象水中の共存イオンの影響をほとんど受けない。
④.凝集剤は不要。(凝集剤を使用する砒素(ヒ素)除去方式は砒素含有汚泥の処理が大変)
⑤.砒素(ヒ素)吸着速度が速くSV10で通水できるため、設備が小さくてすむ。
⑥.砒素(ヒ素)吸着能力が高いので、As-Catch2は長持ちし、取替え頻度は少ない。
たとえば、200mlのAs-Catch2に砒酸濃度が0.1mg/Lの水を毎日40L通水しても、
1年間以上にわたって砒素濃度を0.01mg/L以下にする。
⑦.砒素(ヒ素)飽和As-Catch2から砒素を効率よく抽出できるので砒素回収可能。
⑧.処理水量当たりの装置費、運転費が安価。
各種砒素(ヒ素)吸着材の性能とコスト比較
吸着剤の種類 | As-Catch2 | セリウム系 | Fe系 | Al2O3 | MnO2 | ジルコニウム系 | |
吸着性 g/L-Ad右欄水濃度を下欄濃度にする時の砒素(ヒ素)吸着力 | 1 | 35 | 6 | 2 | 1.5 | 1.5 | 4.5 |
mg/L | |||||||
0.05 | 19.25 | 2 | 1 | 0.75 | 0.75 | 0.3 | |
mg/L | |||||||
吸着処理後砒素(ヒ素)濃度 | mg/L | <0.001 | <0.001 | <0.001 | <0.001 | <0.001 | <0.01 |
砒素(ヒ素)吸着可能pH域 | 3~9 | 5.8~8.6 | 5~6 | 4~6 | 4~7 | 7~9 | |
亜ヒ酸の酸化 | 不要 | 不要 | NaClO | NaClO | NaClO | 不要 | |
凝集剤の添加 | 不要 | 不要 | 不要 | 要 | 要 | 要 | |
対象水のpH調整 | 不要 | 不要 | H2SO4 | HCl | HCl | ― | |
使用済吸着剤の再生 | 否 | 可 | 可 | 否 | 否 | 否 | |
通水速度(SV) | m3/h・m3 | 10 | 10 | 5 | 5 | 5 | ― |
砒素(ヒ素)吸着可能水量右欄濃度の水を0.01mg/L以下まで吸着可能な水:吸着剤比 | 0.1 | 180,000 | |||||
mg/L | |||||||
0.03 | 60,000 | ||||||
mg/L | |||||||
0.12 | 20,000 | 15,000 | |||||
mg/L | |||||||
単価 | 円/L | 4,200 | 4,000 | 1,250 | 1,250 | 6,000 | |
処理ランニングコスト*1 | 円/m3 | 25 | 65~130*2 | 70+α*3 | 35+α*3 | ||
廃棄物処理コスト*4 | 安 | 安 | 中 | 高 | 高 | 高 | |
総合評価 | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | △ | △ |
※1 砒素濃度0.05mg/Lの流入水1m3を0.01 mg/L以下にするに要する吸着剤のコスト。
※2 同社発表資料記載のランニングコストを換算した。
※3 凝集剤添加による汚泥処理コストをαとした。
※4 廃棄物処理コストは廃棄吸着剤処理費と発生汚泥処理費を勘案した。
以上のデータは「環境技術」2006, No.4, p.283-294を参考し,加筆した。
As-Catch2に関する研究論文
研究論文 | 冊子名 | 発行 |
新規に合成した水酸化鉄のヒ素吸着特性 柳田友隆・江 耀宗・中村未来 | 水環境学会誌,36(5),149~155 | 2013 |
新規に合成した水酸化鉄の亜ヒ酸吸着に及ぼす共存陰イオンの影響 江 耀宗・柳田友隆・三谷知世 | 水環境学会誌,37(5),169-176 | 2014 |